(つづき)

おにぎりをタッパに詰め込み、パッキングも終わり、雨対策もとりあえず困らない程度には整えた。
さて、どこから攻めようか(最初にどこに行こうか・・・)、と考えている間に、友人知人からいくつか電話が入った。


「ワタクシさん、そっち、電気、来てる??ウチ、今朝から停電でいまだに戻らないんだけど・・・。このまま戻らない、とかなっちゃったら、冷蔵庫の中のモノとか、食べるか捨てるかしないと・・・」

「なあワタクシ、空港って、どうなってるか知ってる??今日帰るお客さんが居るんだけど、昨日から空港もタイ航空のオフィスも、ぜんぜん捕まらないんだよね」

ナルホド、アチラコチラで情報不足のようである。

先ほど先輩に言われたことを思い出す。やはり、情報収集と周知は極めて大事なようだ。なにより、ワタクシ自身が、電気や空港の情報を、知りたい。電気、といっても、昨夜見たように、電柱が倒れて通電が切れているだけ、というならともかく、震災で変電所が倒壊している可能性も否定できず、また、山中にいくつか建設された発電所が損壊している可能性もある。あるいは、発電所からカトマンズへ電気を送るための配電網がやられていることだって、考えられる。ちょっと電線が切れている程度なら持久戦になるが、発電所や主幹配電網が損壊しているとすれば、これは国外脱出の検討も必要になるだろう。

その場合、空港がどの程度機能しているのかいないのか、滑走路や管制系統に異常はないのか、等々、現況の把握も必須事項であった。

幸い、今年の日本人会理事会は、たまたまではあるが、電力庁関係者や空港改善業務関係者等に入って頂いている。電話して状況を尋ねてみると、たしかにその情報は必要でしょうね、ということで、すぐに調べてくれることとなった。程なくしてお電話を頂き、電気系統と空港の状況を教えて頂く。

「ワタクシさん、今訊いてみましたら、主力発電所およびそこからカトマンズ盆地内までのメインの送電線には、支障が出てないことを確認済みだそうです。正確には、今、まだ確認作業中のようですが、政府庁舎や国連事務所等、重要施設には配電されているようですから、確度は高いと思いますよ」

「ワタクシさん、直接確認ができてない間接情報なんですが、管制塔から管制官が撤退したようで、しばらくは空港、動いてなかったようです。各国が支援物資を送ることを決定したみたいで、空港が開かないとハナシにならないので、今、被害調査と運航再開のアレンジ中だそうです。旅客は大勢空港に詰めかけて、そこで運航再開を待ってるそうで、相当混乱してますね。返事になってなくて申し訳ないですが、正確な情報を掴むのも、再開の見込みを聞き取るのも、それすら、難しいくらい混乱してます」


十分である。

一人でネットを見たり、周りの流言飛語を訊いたりして「わからない」と思うより、複数の情報を組み合わせて大局を掴む方が確度は高い。ましてや担当官庁幹部や実務部隊に携帯等で連絡がとれるこの方々からの「多分」は、極めて信頼性が高い、と、ワタクシは(勝手に)判断した。空港関係のように、状況がほとんどわからない時でも、「状況がわかりません」と、改めて聞かされる方が、不思議と安心するものだ。

一応、大使館情報ともすりあわせをしてから・・・と思ったが、電話が混んでいて繋がらない。情報収集のための外出を目論んで、準備まで済ませたワタクシ、頂いた情報の確度を信じて、「震災臨時ニュース第二号」をメールで発出し、MTBを簡単に点検して、街にこぎ出した。


(つづく)