(つづき)

さてそのうちに、おにぎりと焼きそばが出来上がり始めた。

Kくんは先ほどから、

「あ゛あ゛〜〜!しゃもじ 忘れた・・・!」
「う゛っっわ゛、キレイなタオル、終わってもうた!」
「最悪や!ソース足りひんかも・・・」

などと、一人でぶつぶつ(静かに)パニクりながらも(笑)、「タマゴ堅焼きの焼きそばあと2つ!」「おにぎりあと3つ追加です」と次々と(容赦なく)注文を通すワタクシに、「ういす」「ういす」(・・・笑、意味わからん・・・)と答えて、次々におにぎりを握っていく。

できあがったものを渡す時点で、おひと方の注文がすべてそろってないこともあるのだが、

「おにぎり、ご注文の2個中の、1個目です。残りあと1個と、焼きそば2つ、あとからお届けします」

などとワタクシが変則的な配膳をしても、

「あ、いいですよ、いいですよ。じゃあ・・・たしかお宅、おにぎり1個でしたよね?お先どうぞ」

などとお互いに譲りあい、にわかホールスタッフのワタクシを助けてくれる。


なんとなくペースがつかめてきたワタクシたち給仕側、朝10時過ぎからバタバタ準備して、14時過ぎころには、ようやくみなさんに一通り配膳が終わった。が、大使館は大使館で給仕作業を頼んだことを気にかけているのか、ホールが終わったら大使館用に40個、というご注文を頂いているので、急いでそちらにとりかかる。といっても、やるのはワタクシではなく、Kくんであるが、中空の一点を見つめるような表情で、もくもくとおにぎりを作り続けている。

すでに全体量の管理が直感でできるようになっているKくん、スタッフさんや助っ人たちに、

「あと2合!!」

と、檄を飛ばしている。これを訳すと、「今のごはんの量だと足りないから、あと2合、もいっかい自宅へ帰って仕込んで、炊きあげて持ってきて」という意味である。ワタクシが数えていただけでも、最低でもすでに3往復くらいしているハズだが、まあ、ご注文があり、Kくんが受ける、と言っているのだから、やるしかない。Kくんも、ネパール人シェフも、その他の助っ人女子達も、ほとんど飲まず食わずのハズだ。

新しくごはんが届くまでに少し時間が空いたので、今までの注文と配膳、頂いたお金等の記録をもう一度まとめ、ちょっとだけ休憩モードに入っているKくんに渡した。


ついでに、気になっていることを訊いてみる。

ワタクシ 「あのさあ、これって、全部自宅から持ってきたんやんな?」
Kくん   「ういす」(もうエエって。笑)
ワタクシ 「自分らが食うもん、あんの??」
Kくん   「・・・・・・・」
ワタクシ 「・・・・・・・・!(おいおい)ないのっっっっ?!」
Kくん   「・・・・・・・」
ワタクシ 「いやいや、あのさ、じゃあ、ある程度おにぎりとか、取っといた方が、良くない?」
Kくん   「いや、大丈夫っす」

すげー!すげーよ、Kくん!キミのその坊主頭と口調と全体から醸し出す雰囲気、健さんに見えるよ!!

Kくん   「いや、まあ、ラーメンとかほかにもイロイロ、食うもんなら、あるっすから」

じぶん、不器用っすから。(いや、これは言ってない。でも聞こえた気がする)


今朝からのバタバタをお互いにねぎらい、自宅が被災しているネパール人シェフを早めに帰し、明日以降、どういう風にやるのか、やらないのか、大体の話を決めようとハナシをしているうちに追加のご飯が届く。もう完全に慣れてきた合宿チーム、手早くご飯をボールに開けるヤツ、定めた大きさに海苔をちぎるヤツ、おにぎり用の新しい水と塩を用意するヤツ、給仕用のお皿や付け合わせの漬け物等を準備するヤツ・・・。

流れるような見事な連係プレーである。


これならワタクシは、どちらかというとお邪魔なだけで、大して役に立てそうにない。一通りの給仕は終わっていることだし、そろそろ夕方に差しかかっているので、ここ以外の場所の状況を見たり、これ以外の情報を集めたり、も、したいところだ。ここは皆さんにお任せして、暗くなるまで情報収集しようと、おいとますることにした。

「じゃ、何もなければコレで失礼しようかな?」

と、問いかけるワタクシにKくんは、

「そっすね、もう、とりあえず手は足りそうなんで」

と返してくれる。

いや、そっちこそ、大変だったよね、もうひと踏ん張り頑張ってね、と言おうとしたが、すでに夕方も近く、ホールの避難者の方々から「夕食も出してもらえるの?」「今やってるおにぎりも夜食用に売ってもらえる?」等々の問い合わせが来始めたので、さっさと失礼することにする。


「じゃ、お疲れさま」

と帰ろうとするワタクシの背中に、手を止めないまま顔だけ上げた合宿チーム一同が、

「お疲れさまでした!」

と、渋谷あたりのバイト並みに声を上げて送ってくれる。

心の中で「ういす」とつぶやいて、そそくさと大使館ホールゲートを後にした。


(つづく)