(つづき)

そんな風にして、いくつかの頼みの綱を回って明日以降の緊急避難的シェルターを確保し終えたワタクシ、もう、日も暮れようとしているので、自宅に戻ることとした。

ペダルをゆっくり踏み込みながら、

電気、ないんだよな〜〜〜、たぶんな〜〜〜・・・・・

と思いを巡らせつつ、ちっともわかってない飼い犬の居る我が家へたどり着いた。


ご近所の様子やなんとなくの雰囲気で、まだ通電してないだろうな・・・ということは想像しながら、おそるおそる壁のスイッチを押してみた・・・が、点かない。

やっぱり、か・・・・

分かってはいたが、本当に昨夜の不注意が悔やまれる。テレビが見られないくらいは我慢するが(それでも日本で今回の地震がどのように報道(テレビニュース報道)されているか、確認ができないのは痛い)、頼みの綱のケータイの充電ができず、ネットへの接続もできないのは、文字通り致命的である。

用意しておいたロウソクを何本か、屋内のあちこちに配置し、明るさと温かさが感じられるようにして、無理矢理ひと息ついた。山用のLEDヘッドランプをつけなくても、かなり明るく感じるのが愉快だ。バッテリーを大事に使わなければならないのは分かっていたが、ついつい、3G接続で情報を探してしまう。Facebookでは特に、盆地内在住のあちらこちらの方々から被災状況等が詳細に報告されており、テレビが点かないこの際、これを有効活用しない手はない。大容量充電用蓄電池(バッテリスティック)もフル充電されているから、なに、しばらくの間は持つだろう・・・。

いろんな情報に夢中になっているウチに、ふ、と気付くと、すでに21時近くになっていた。

が、今日は一日中立ち働いていたのと、ネットサーフィンの途中から飲み始めた生あたたかいビールの酔いも手伝ってか、立ち上がってアレコレやろう、という気にならない。あとちょっと、あとちょっと・・・と思ううちに、すぐに22時になり、23時になった。が、それでもまだ、なにかをしようという気に、ならないのだった。


ちょっと、おかしくないか?オレ・・・????

昨日は発災の日だったわけだし、その後の対応で気が張り詰めていたから、疲れていたのもわかる。今日も一日外出して、アレコレやってはいたが、そんなに力仕事を頑張ったわけでもなく、Kくんのお手伝いはただ単に記録をつけ、その通りに手渡した、というだけのことで、飯炊き部隊や焼そば部隊に比べると、全然仕事なんて、してないのである。その後少し自転車で走るには走ったが、これとてあっち見ては止まり、こっち来ては止まり、で、盆地内を激しく走り抜いた、とはとても、言いがたい。

真っ暗な部屋に灯るロウソクの炎を、酔ったアタマでぼんやり見つめつつそんなことを思っていると、突然、

あ・・・これってもしかして、よく聞く「バーンアウト」の一種かも?

と思い当たった。

ハナシに聞く日本の大災害、大被害や、その後明らかになったネパール国内の悲惨な被災状況等を考えると、ワタクシの経験など、被害らしい被害はゼロであるし、身体は健康で動けているわけだし、まったく、取るに足りないものである。しかしやはり、異国の異常な状況のなかで、追い詰められた緊張感で過ごしてきたこの2日、電気を失った真っ暗な部屋の中で、酔ったアタマでロウソクの明かりを見つめているうちに、急激、急速に、「何かをやろう」という意欲が縮みきっていくのを感じた。

寝るための準備をするのも、背中のすぐ後ろにあるベッドに上がることも、面倒だ。すぐ脇にあるデイパックの中には今朝慌てて作ったおにぎりがあり、キッチンにも夜食用に残しておいたものがある。手を伸ばせばランチ用のおにぎりが、ちょっと立ち上がれば、さっきビールを取りに行ったキッチンのおにぎりが、ある、のに、それすら面倒で、動く気が起きない。床に直接置いたビールだけを口に運びながら、このままウサギのように死んでいくのではないか、という気さえ、し始めた。

Facebookやメールで、友人知人からメッセージが届くが、これにいちいち反応するのも鬱陶しい気がするほどだ。何が要るのか、何ができるのか、それをワタクシに訊かれても、致命的な被災はしていないし、そういう方々の情報は入ってきてないし(実際には今回、テレビ各局は非常に頑張っていたらしい。こちらが停電で見ることができなかっただけだ)、そういう説明的な回答を返信するだけでも、気持ちが圧迫されてしまっているワタクシ、妙にささくれ立って、「知るか、当人達に訊いてくれ!」と書いてしまいそうになる。

ネパールに長いこと住んでいるクセに、今のワタクシは有効な情報もとれず、何かためになる救助救援を(自分が直接)することもできない。被災、被害の範囲が大きすぎて、個人の力でなにができるのか、想像もつかない。お昼にやってたお手伝いだって立派な支援だ、と、励まして下さる方もおられようが、ワタクシのやったことなど、大きく見ても(大きく見ても)、全体の1割にも、満たない。普段デカいツラしていい気になっているが、こういう急時に、ワタクシがいかになにもできない、ちんけな野郎か、ということを、徹底的に思い知らされている気が、強く、していた。

かれこれ1時間近く、そうした、自問自答というのか、自己ディスというのか(笑)、どんどん深まっていく酔いの中でさまよっていただろうか。

たまたま思いついた、自分に対する一つの質問で思考にとっかかりが生じ、少しづつ気持ちが動き始めた。



なんのためにネパールに居るんだっけ??


(つづく)