(つづき)
それはまあ、何十年も前にやった水道、電話その他のインフラ、その後に家屋の新築があったり、取り壊しての建て直しがあったり、新しくパイプや電話線を敷設しなおしたり、いろんな過程で、だんだんわからなくなる、というのは、理解できなくも、ない。
あるいはまた、実務組の技術者は別として、各インフラ事業者の幹部クラスというのは、あちらこちら転勤があり、時には事業者間での人事交流などで、NEAの人が電話公社に来てたり、水道局の人がNEAに来てたり、といったケースもあるから、だんだんと、埋設物情報が拡散し、雲散し、霧消していくのも、やむを得ない側面も、ある。
はたまた、前述した「共同溝」的システムがないので、水、電気、電話、下水、光ファイバーその他、埋設物ごとに違うチームがいちいち掘り返して埋めるもので、横断的な情報がない、というのも実状である。
それはまあ、何十年も前にやった水道、電話その他のインフラ、その後に家屋の新築があったり、取り壊しての建て直しがあったり、新しくパイプや電話線を敷設しなおしたり、いろんな過程で、だんだんわからなくなる、というのは、理解できなくも、ない。
あるいはまた、実務組の技術者は別として、各インフラ事業者の幹部クラスというのは、あちらこちら転勤があり、時には事業者間での人事交流などで、NEAの人が電話公社に来てたり、水道局の人がNEAに来てたり、といったケースもあるから、だんだんと、埋設物情報が拡散し、雲散し、霧消していくのも、やむを得ない側面も、ある。
はたまた、前述した「共同溝」的システムがないので、水、電気、電話、下水、光ファイバーその他、埋設物ごとに違うチームがいちいち掘り返して埋めるもので、横断的な情報がない、というのも実状である。
ことほどさように、埋設関連、周辺インフラ関連というのは、複雑かつ怪奇に絡み合っているのであって、パイプ破損事件の時にワタクシが関わっていた工事の、関連諸官庁を交えたキックオフミーティングは、かなり欠席者がいたのにも関わらず、主催の道路局を皮切りに、主関連官庁である電力庁、電話公社、水道局、民間航空庁、交通警察、その他諸々、しかも各官庁の地域事務所毎の所長さんや担当者(ティンクネエリア担当、ガタガールエリア担当・・・といった具合)等々、総勢100名近い会合となったのであった(疲)。
そして、これはまだ、空港わきからバクタプールまで、という狭い範囲の道路拡幅のハナシであるが、バッタライさんがやろうとしていたのは、カトマンズ盆地・リングロード内外、全体の、道路拡幅、ということであるから、気が遠くなる。
道路だけとってみても、恐らく、国有部分管轄は道路局、支線などはかなりの部分がカトマンズ・ラリトプール・バクタプールの各ミニスパリティ(municipality)、場所により、地域住民の入会地や個人の私有地等々が複雑に入り組み、一筋縄ではいかないことが、明白に想像できた。
そしてここに拍車をかけるのが不法占拠問題、当国のパンチャヤット時代というのは、かなり優秀な人がキチンと仕事をしていた時代でもあって、道路を建設する際に
「道路の中央から両側7.5mは国有地(ROW、Right of Way)」
と、ハッキリ決めてあったのだが、当初は車の数も少ないのでその半分くらいしか使わず、残り部分はほったらかしていたところ、そこに住み着いたり建物を建てたりする人続出、カトマンズ盆地の道路拡幅がどうしても上手くいかなかったのは、これらの「不法占拠者」が、不法であることを承知の上で、「我々の居住権を守れ〜〜!」と叫んで、やっかいなことに、これが、奏功していたからである。
いろんな交渉があり、駆け引きがあり、やれるところから徐々に拡幅を進めていたバッタライさんであったが、面白かったのはラリトプール市民、
「あ、これはバッタライ、本気だな」
と気付いたとたんに、さっさと指定された境界を基準にカベを作り、作り終わってから既設のカベを取り壊す、という手順で拡幅計画に従う人多発、そもそも境界を意識して家を作っているから、カベを引っ込めるだけで済むようになっていた、というのが、民度の高さをうかがわせる(他の地区はそこに建物を建ててしまっているから、取り壊しが必要な場所が多かった)。内カベを作ってから既存の外カベを取り壊せば、防犯上も心配がないし、早いタイミングで仕掛けたからレンガ等も高騰しておらず、人手も相場程度で十分に居て、外カベのレンガは、市場で品薄になったのを見計らって高めの中古値で売り払う、という、まあ、ホントにしたたかな方々がたくさんいらっしゃった。
ワタクシの居るラジンパットなどは最後の最後まで拡幅に抵抗していて、もう、どうしようもない、従うしかない、となってから、ようやく人を探したり材料を手配したりするものだから、足下を見られて、相場の倍近い値段をふっかけられた上に配達も作業も遅れがち、ラリトプールではとうの昔に広くて快適な道路をエンジョイしているのに、ラジンパットは舞い上がる土ぼこりの中、ヒトもバイクもクルマもウシもイヌも、ほぼ一車線と化した通りの真ん中近辺を、お互いに避けたり、時にぶつかったりしながら、ビクビクして進む、という状態が異常に長く続いていた(雨の日や夜間などは従って、近所であってもクルマで移動するのが賢明であった)。
でもって、上述したような関係官庁の複雑な工事も、当然、やりやすいところから優先して行われるわけで、移設部隊がラジンパットに流れてくる頃には、水道はいま掘り返しているけど、同時に見えている電話は来週以降の工事、道路の東側の電柱はもう2週間も工事やりっぱなしなのにまだ終わらず、西側の電柱は、道路の拡幅作業は終わっているのにまだ電柱が車線の真ん中あたりに立ったまんま・・・等々、なんか、ダリの絵をみているようであった。
そしてそれら部隊が交代で来ては地面を掘り返し、昨日埋まっていた場所が今朝また掘り返され、夕方埋めてた・・・と思いきや、飲みに行った帰りにまた掘り返されている、といった具合で、訊いてみる度に、
「あ、これは電話」
「あ、これは水道」
「あ、これは電話」
ってな始末、
「電話って・・・こないだも電話、やっとったやん?」
と尋ねるワタクシに、
「いや、こないだのは、こっちの家の分。今日やってるのは、あっちの家の分」
って、こら!!家一軒ごとにいちいち掘り返すんかいっっ(笑)?!っと、やんわり訊いてみると、
「いやだって、こっちの家の取り壊しが終わったのがこないだ、こっちの家のが昨日、あっちの家は、来週から取り壊しで・・・」
エエ。
もうエエ。
吐き気がしてきたので、どうぞ、みなさんのペースで、おやり下さい・・・、と、とぼとぼ家路につくワタクシであった。
(つづく)
そして、これはまだ、空港わきからバクタプールまで、という狭い範囲の道路拡幅のハナシであるが、バッタライさんがやろうとしていたのは、カトマンズ盆地・リングロード内外、全体の、道路拡幅、ということであるから、気が遠くなる。
道路だけとってみても、恐らく、国有部分管轄は道路局、支線などはかなりの部分がカトマンズ・ラリトプール・バクタプールの各ミニスパリティ(municipality)、場所により、地域住民の入会地や個人の私有地等々が複雑に入り組み、一筋縄ではいかないことが、明白に想像できた。
そしてここに拍車をかけるのが不法占拠問題、当国のパンチャヤット時代というのは、かなり優秀な人がキチンと仕事をしていた時代でもあって、道路を建設する際に
「道路の中央から両側7.5mは国有地(ROW、Right of Way)」
と、ハッキリ決めてあったのだが、当初は車の数も少ないのでその半分くらいしか使わず、残り部分はほったらかしていたところ、そこに住み着いたり建物を建てたりする人続出、カトマンズ盆地の道路拡幅がどうしても上手くいかなかったのは、これらの「不法占拠者」が、不法であることを承知の上で、「我々の居住権を守れ〜〜!」と叫んで、やっかいなことに、これが、奏功していたからである。
いろんな交渉があり、駆け引きがあり、やれるところから徐々に拡幅を進めていたバッタライさんであったが、面白かったのはラリトプール市民、
「あ、これはバッタライ、本気だな」
と気付いたとたんに、さっさと指定された境界を基準にカベを作り、作り終わってから既設のカベを取り壊す、という手順で拡幅計画に従う人多発、そもそも境界を意識して家を作っているから、カベを引っ込めるだけで済むようになっていた、というのが、民度の高さをうかがわせる(他の地区はそこに建物を建ててしまっているから、取り壊しが必要な場所が多かった)。内カベを作ってから既存の外カベを取り壊せば、防犯上も心配がないし、早いタイミングで仕掛けたからレンガ等も高騰しておらず、人手も相場程度で十分に居て、外カベのレンガは、市場で品薄になったのを見計らって高めの中古値で売り払う、という、まあ、ホントにしたたかな方々がたくさんいらっしゃった。
ワタクシの居るラジンパットなどは最後の最後まで拡幅に抵抗していて、もう、どうしようもない、従うしかない、となってから、ようやく人を探したり材料を手配したりするものだから、足下を見られて、相場の倍近い値段をふっかけられた上に配達も作業も遅れがち、ラリトプールではとうの昔に広くて快適な道路をエンジョイしているのに、ラジンパットは舞い上がる土ぼこりの中、ヒトもバイクもクルマもウシもイヌも、ほぼ一車線と化した通りの真ん中近辺を、お互いに避けたり、時にぶつかったりしながら、ビクビクして進む、という状態が異常に長く続いていた(雨の日や夜間などは従って、近所であってもクルマで移動するのが賢明であった)。
でもって、上述したような関係官庁の複雑な工事も、当然、やりやすいところから優先して行われるわけで、移設部隊がラジンパットに流れてくる頃には、水道はいま掘り返しているけど、同時に見えている電話は来週以降の工事、道路の東側の電柱はもう2週間も工事やりっぱなしなのにまだ終わらず、西側の電柱は、道路の拡幅作業は終わっているのにまだ電柱が車線の真ん中あたりに立ったまんま・・・等々、なんか、ダリの絵をみているようであった。
そしてそれら部隊が交代で来ては地面を掘り返し、昨日埋まっていた場所が今朝また掘り返され、夕方埋めてた・・・と思いきや、飲みに行った帰りにまた掘り返されている、といった具合で、訊いてみる度に、
「あ、これは電話」
「あ、これは水道」
「あ、これは電話」
ってな始末、
「電話って・・・こないだも電話、やっとったやん?」
と尋ねるワタクシに、
「いや、こないだのは、こっちの家の分。今日やってるのは、あっちの家の分」
って、こら!!家一軒ごとにいちいち掘り返すんかいっっ(笑)?!っと、やんわり訊いてみると、
「いやだって、こっちの家の取り壊しが終わったのがこないだ、こっちの家のが昨日、あっちの家は、来週から取り壊しで・・・」
エエ。
もうエエ。
吐き気がしてきたので、どうぞ、みなさんのペースで、おやり下さい・・・、と、とぼとぼ家路につくワタクシであった。
(つづく)