(つづき)

と、まあ、ここまで読んで頂いて、

「いや、自分ならこういう方法で道路拡幅を成功させただろう!」

と言い切れる方がいらっしゃったら、ぜひ、お目にかかりたい。

複雑な埋設物、それぞれの組織体の内部のヒエラルキー、組織体と組織体同士のヒエラルキー、星の動きで決まる祭事催事の数々、絡み合う利権、不法居住者によるバンダとジュルス、これらを解決するための人員配置と予算の獲得、高まるSAARCの圧力、その他もろもろ、もう、ワタクシなら、絶対に、ムリである。


不法といえば、水、電気などは典型的な「タダ乗り発生型」インフラ、自分で引き込み線を作って、「盗水」「盗電」など、危険を顧みずにやってしまう人は、昔の日本ですら少なくなかったのであるが、ここネパールでは、特に、地方のちょっと大きな町などに行くと、料金というのは大口利用者が払ってあたりまえ、それ以外の人々は、さくっ、とパイプをつないでは水を引き込み、ちょっ、と電線をつなげては電気を盗む、というのが、むしろ常識になっているような地域も少なくない(ホンマかいな・・・ホンマなんです)。

その昔、カトマンズ南東の田舎に事務所があった時代に、

「本社に電話をしよう」

と、受話器を持ち上げたら、いきなり聞こえてくるネパール語(言っときますが、まだダイヤルもなにも、してませんからね)、何度か受話器を置いたり持ち上げたりしてもいっこうに切れる気配がなく、ちがう回線から用事を済ませたのであるが、後日届いた請求書は異常な高額になっていて、いくら東京へ電話するといっても高すぎる、と、スタッフに命じて明細を取り寄せたところ、あるわあるわ、マレーシア、UAE、カタール、あちこちの国番号への通話記録、激怒して(みせて)調査させたところ、

「ミスターワタクシ、これはスタッフがかけているのではなくて、盗電話です」

と報告を受けて、ぶっ飛んだ。

カラクリは、こうである。

電話回線、というのは、地方の場合、その地域その地域の一番大きな町に設置された交換機のキャパで、サービスの規模が決まってしまう。ワタクシが上述した田舎に乗り込んで、早速電話回線の手配を命じたところ、一番近い電話局がクルマで1時間弱走った町にしかなく、そこで交渉して帰って来たスタッフ曰く、

「この町だけでも回線待ちの人が数百人居るのに、そんな田舎に回す回線なんか、ちゃいなちゃいな(ないない)」

と、けんもほろろだったそうで、まあこれは、日本の援助である、ということを前面に押し出し、あちらこちらから推薦状やら依頼状やらをどっさり取り付けて、なんとか3回線、回してもらえたのであるが、ということは、今まで回線が回ってきてなかった地域に、国際電話が可能な回線が、3つも回ってきた、ということでも、ある。

でもって、盗電技術に優れた地域住民の方々、さっそくヘイシャの電話回線を見つけ出し(スタッフ曰く、元の回線が極めて少ないから、すぐ見つけられるらしい。疲)、ちょっっ、と、電話線をつなぎ直して電話機を接続すれば、あ〜〜〜ら不思議、電話回線と権利者の名前はヘイシャのまま、でもって電話は使いたい放題、これが、受話器を持ち上げただけでダイヤルもしてないのに、会話が聞こえていたゆえんである(ある意味すげー)。


で、で、何が言いたいか、というと、道路拡幅等で、こうした回線の撤去や移設を余儀なくされた場合、日本では「しまった!バレなきゃいいけど?!」と、なるところ、こちらの方々は、堂々と抗議をし、要求をし、

「なんで回線を移すんだ!おいとかなきゃ、ダメじゃないか!撤去反対!!」

くらいの勢いで、ヘタをすると「スミマセン、ワタクシが悪うございました」と言ってしまいそうになるぐらい、強く回線の維持を求められること、多し(泣)。

おそらくカトマンズの道路拡幅でも、そうした「盗んだもん勝ち」的な交渉があちらこちらで発生していたに違いなく、まあもうホント、良くやったよ、バッタライジ、と、新橋の屋台でお酌してあげたい気分である。


(つづく)